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消防・防災マガジン

写真:消防・防災マガジン

落雷多発、非常用放送設備に直撃

――壊れる“メカニズム”と、明日からできる実務対策

最近の雷雨で、読者の皆さんの現場でも非常用放送設備(非常放送)がダメージを受けた—

そんな声が相次いでいます。落雷は電源・信号・アンテナの3経路から設備に侵入し、一瞬でアンプや制御盤を失わせます。法令・規格の要点と、再発を防ぐための「配電—信号—アンテナ—接地」一体設計を現場目線で整理しました。なお、気象庁の雷ナウキャストは10分ごとに更新され、1時間先までの雷活動度を1kmメッシュで示します。


壊れる理由:雷サージは3つの“侵入路”で来る

①電源系(商用電源から)

     配電線に重畳した過電圧・過電流が受配電盤→分電盤→機器へ伝播。JIS C 5381-11は電源用SPDの要求性能と試験方法を規定し(IEC 61643-11準拠)、クラスI/II/IIIの試験・定格概念を与えます。選定・設置はこの枠組みが拠り所です。 

    ②信号系(スピーカー線/制御線/監視線)

       長距離配線に誘導したサージがアンプ入力や制御基板を破壊。JIS C 5381-22は通信・信号回線用SPDの選定と適用基準を定め、ラインの種別・終端条件に応じた保護素子とアース取りを求めます。 

      ③アンテナ系(屋上)

         FM/緊急放送・時報・受信アンテナなどから同軸経由で侵入。外部LPS(避雷針・引下げ線)と内部LPS(等電位ボンディング+SPD)の二層設計をIEC 62305が体系化しています。 


        法令・基準の“守備範囲”を確認

        • 消防法系:非常警報/非常用放送の基準

         消防庁告示(昭48告示6)や関連通知は、非常警報設備(音声警報・非常放送を含む)の機能・放送要件・スピーカー条件などを規定。機器更新時や系統変更時は、これらの要件適合と所轄との事前協議が基本となります。 

        • 点検・維持管理

         JEITA資料は「基準適合機器の設置だけでは不十分。消防設備士・点検資格者による法定点検を所定の周期で実施せよ」と強調。雷シーズン前点検の重要性は高いです。 

        • SPD/JIS体系

         電源用(JIS C 5381-11/12)、通信用(-21/22)など、回路ごとに相応のSPDを選ぶことが前提。相互関係をまとめた技術解説も公開されており、設計の出発点になります。 


        初動対応:壊れた直後の「4ステップ」

        1. 安全確保:感電・二次災害防止のため、該当回路の停電・施錠・掲示。
        2. 機能代替:避難誘導に必要な代替放送手段(仮設PA等)を確保し、館内周知。
        3. 系統切り分け:電源・信号・アンテナを順番に切り離し、被害点を特定(アンプ、DSP、監視盤、スピーカー支線など)。
        4. 記録・連絡:被害部位・時刻・気象状況を記録し、所轄消防署へ状況相談。修繕・更新は法令適合と雷対策の追加を同時に計画する(制度運用は地域差があるため、所轄指導に従う)。

        ※雷発生時の運用では**気象庁「雷ナウキャスト」**の10分更新を参照し、屋外作業・屋上立入の停止判断に活用。 

        雷は止められませんが、備えは今日からできます。次の雷雲が来る前に、現場のチェックをひとつ増やしてみませんか?

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